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【地酒解体新書第21回】生酒に見る順列と組み合わせ。

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酒類

「生」にもいろいろありまして


「生」という言葉は、切り分け方が幾つかあります。一つは、「生きているかどうか」です。

通常みなさんが召し上がっている「生ビール」は酵母が取り除かれていて、加熱殺菌していません。つまり「生」ですが、「生きて」はいないのですね。
加熱殺菌してしまえば酵母を取り除く必要はありませんが、「生」ではなくなります。
どちらも「生きて」はいないので、常温で流通しても再発酵する心配は少なく、美味しさを保つための定温輸送や冷蔵保存は必要ですが、根本的に変質してしまうことはありません。

地ビールや特殊な「生」には酵母が残っており、しかも「生きて」いますから、輸送・保管・サーブする現場を通して要冷蔵されます。必然、コストは高くなるわけです。

お酒も同じことで、まずは「生きて」いる「生」と「生きて」はいない「生」から分けると、分かり易くなります。
・搾りたて
・搾りたて原酒
・搾りたて生原酒
・搾りたて生
いきなり一つのお酒が、4種類に分けられます。

「搾りたて」は、「絞りたて」でも「しぼりたて」でも同じです。
原酒は加水しているかどうかですから、この場合の「生」は基本的に「生きて」いるハズです。
じゃあ1と4は同義かってぇと、「生」なら「生」と言うだろうから、1は「貯蔵期間が無い」ってぐらいで御理解いただければ良いと思います。

酒を分ける、いろいろな切り口。


ここで、一つのお酒が4種類に分けられたのですが、実はそれぞれが色々な切り口で再び分かれて行きます。
搾っている順番で「荒走り」「中汲み」「中取り」と分かれ、「荒走り」は「しぼりばな」「あらしぼり」などとも表現します。

もう一つは無濾過かどうかで、梅錦の「つうの酒」とか「大吟辛口」などの商品を「梅錦・大吟辛口・搾りたて・無濾過・生・原酒・中汲み」という商品名にしたとすれば、「梅錦・大吟辛口」はこの段階で30種類以上に分けられます。

この理由は、「搾りたて」かどうか「無濾過」かどうか「生」かどうか、「原酒」かどうか‥などが順順に掛け合わされるからです。
その種類の数を、またまた倍々に増やす要素に、「ふなくち」「袋吊り」「斗壜取り」「斗壜囲い」などがありますが、これは上槽する時の部位名であったり、本来は同義語であったりするので省きます。

次は貯蔵です。
「生貯」と略されたりしている「生貯蔵酒」は、文字通り「貯蔵」が「生」な訳ですが、これに関することは第19回で詳しく説明していますので、御参照ください。

ここでは、組み合わせのパターンだけを考えてみましょう。
上記で30種類以上に分かれた一つのお酒を、そのまま商品化してしまえばそれまでですが、「搾りたて・無濾過・本生・原酒・中汲み・三年熟成」「搾りたて・無濾過・原酒・中汲み・生貯蔵酒」「搾りたて・無濾過・原酒・中汲み・冷やおろし」などに分けられます。
まぁ、実際には「搾りたて・冷やおろし」ってのは無理があるにしても、「冷やおろし」は「生詰め」のことなのに「搾りたて新酒生詰め」なんかは商品名になりそう。

こうして、個々の銘柄を増やしていったとしたなら、蔵元でも、「それ、どんな味だったっけ?」と、商品を把握できなくなってしまいそうですね。

さぁて、あなたはどれ飲みたい?

どこまでも広がる「順列と組み合わせ」


梅錦は平成15BYの実績で、40種類以上の原酒を造っています。

その中には大吟醸・吟醸(中吟)もあり、それが純米(大)吟醸か本醸造(大)吟醸に分かれ、別途で普通酒・本醸造酒・純米酒があります。理論上ではありますが、上記の「搾りたて」から「生」に至る区別をそれぞれに掛け合わせれば、んー誰か数学の得意な人、教えてくれぇーぃ。

で、今、数学の天才に電話してみました。

明日美チャンという、普段から着物を召されている美人。一見ツンとオスマシ風なのに、実はオチャッピー型の才媛でして、次回は彼女の友達が開発した手作り肴の話です。